「いらっしゃいませー、本日のおすすめ商品でございます、ご試食いかがですかー」
そんな剣幕を他所に店員の明るい声が響く。
灯がそれに気を取られ、明子がこう言う。
「あ、これいいね? サウエッセンウィンナー、割と長く持つし朝食に焼くだけだから便利じゃん」
「話をそらしたなあんた」
「そう?」
白々しく言う明子。
「まあいいわ、確かに便利だして間もないからこれにするわ」
観念したように籠に灯はサウエッセンを入れ、一方でおまけに試食の焼きたてホカホカのウィンナーを美味しくいただき明子は上機嫌。
灯はげんなりしていた。
ほどなくして二人は会計を済ませ、エコバックに商品を詰めて店外に出ると雨は本降りになり、猛烈な勢いで振り付けていた。
「えーなんぞこれ! 天気予報では今日曇り時々雨だからこんなに降るはずなのにー」
「これは参ったわね、傘さして歩いてもずぶぬれになりそうだわ」
それぞれ文句と落胆を口にする二人。
「灯、覚悟していくしかないか」
「そうね」
それから二人はずぶぬれで帰った。